フルフィルメントは、英語で実行、業務遂行といった意味を持ち、EC業界においては、受注、梱包、発送、受け渡し、代金回収、顧客のアフターサポート(CSセンター)までのバックヤード業務の一連のプロセスのことを指します。
フルフィルメントにはどのような業務があるのでしょうか。
業務の内容を大きく3つに分けそれぞれの項目ごとに詳細を記載したので、順番に見ていきましょう。
卸会社やメーカーから商品が物流倉庫へ届いたことを確認し、商品や個数が正しく入荷されているかをチェックします。
速さと正確さを上げるために、検品作業にはハンディターミナルで商品バーコードを読み取ったり、バーコード検品システムを導入している物流倉庫もあります。
消費者に届けるための商品を保管します。ラックやパレット単位で保管するなど、企業によって工夫しています。
ECサイトの注文は都内からが多いため、物流倉庫を都内に構えるEC・通販事業者が多い傾向にあります。
消費者の注文を受け、出荷準備をします。
在庫管理システムを連携させて在庫を管理し、出荷指示を行います。
企業によって異なりますが、出荷前に注文状況の確認や注文完了報告など、いくつもの工程を経て出荷と
なります。
企業の販売チャネルによっては電話受注などのさまざまな対応が求められますが、コールセンターに受注処理業務が集約されているケースがほとんどです。
出荷指示を受けて、在庫から必要な数量だけ商品を取り出します。
物流倉庫では、広いスペースにたくさんの商品を保管しているため、倉庫内から必要な商品を探し出す作業が必要です。
大型の商品や重量のある商品は、フォークリフトや台車を使ってピッキングを行います。
効率良く正確なピッキング作業をするためのデジタルピッキングシステムという支援システムが導入されているところもあります。
商品によってはピッキング後に製品の組み立て・箱詰め・包装・ラベル貼り・値札付けなども行います。
商品を発送するために梱包します。この時、商品に傷が付かないように緩衝材を入れたり、感謝状やクーポンを差し込むことも可能です。
また、消費者に商品を手渡しできないECや通販では、ダンボールの開封のしやすさや商品の取り出しやすさなども、消費者がリピートするか否かに影響するため重要なポイントです。
配送業者に梱包した商品を受け渡します。
宅配業者は受注処理時に作成した個人情報を元に届けます。商品の発送時には発送完了メールを消費者に送り、商品が配送されたこと伝えます。
従来に比べて減ってきたものの、商品の受け渡し時に支払いをする代引きという決済業務があります。
料金の回収は各宅配業者が請け負いますが、その後の現金の保管方法に関しては、代引きがどのくらい発生するかなど、企業の事情によって検討する必要があります。
商品の返品が発生した場合には、その商品を受け取る返品処理を行います。
ここで消費者に対する対応は慎重に行いたいところです。
対応パターンはいくつか考えられます。
返品する商品を物流倉庫に配送してもらい、商品の状況を確認してから再発送するのか、返品要望が起きた時点で新しい商品を発送するのか、特別梱包にするのかなど企業によって方針はさまざまです。
フルフィルメントはEC業務の多くを占めており、スムーズに商品を出荷してお客様のもとへ届けるために必要不可欠なプロセスです。事業が軌道に乗って注文が増えれば増えるほどフルフィルメントにかかわる受注処理や梱包・発送などの業務は負担が重くなるため、効率的な処理方法を考えなければなりません。
いくら魅力的な商品を取り揃えていても、注文してからなかなか届かない、せっかく注文したのに欠品していたなどのトラブルがあれば、顧客からの信頼が低下してしまいます。安定的に商品を届けてお客様から信頼を得られるショップであり続けるためには、フルフィルメントの充実と安定をはかることが欠かせません。
フルフィルメントサービスとは、入庫・検品、保管、流通加工、梱包、出荷といった物流業務に加えて、決済処理やカスタマーサポートなどECに必要な業務の一部または全部を代行するサービスのことです。自社のリソースやノウハウが不足している部分だけを代行してもらう方法や、業務にかかわる一連のプロセスをまとめて代行依頼する方法など、サービスの使い方は事業者によって異なります。
3PLとは、3rd Party Logisticsの略で、荷主の物流業務を第三者に任せることで効率化を図ることを意味しています。
フルフィルメントと3PLはよく似ているように思えますが、委託する範囲が異なります。3PLが物流に関わる業務のみを外注するのに対し、フルフィルメントでは注文を受けるコール業務や決済業務も含めて外注を行います。より広い範囲を第三者企業に委託することで効率化を図ることが可能となります。
メリットは大きく分けて3つあり、「高収益化」「業務の効率化」「顧客満足度の向上」が挙げられます。
自社で人材を抱え、倉庫やコールセンターを構えると固定費として販管費計上され、利益が出辛い体質と
なります。
しかし、フルフィルメントサービスを受けると、自社で倉庫、コールセンター、それにかかる人材を抱える必要がなく、その費用は最低限の固定費と売上に連動した変動費に変わります。
こうすることで、損益分岐点が押し下げられ、利益の出やすい体質となります。
フルフィルメントサービスを使用すると、受注、梱包、発送、受け渡し、代金回収、顧客のアフターサポート(CSセンター)などの業務を、そのプロが行うことになります。
ノウハウがあるプロに依頼すると、通販業務全体のオペレーションの安定化と効率化を図ることができます。
特にバックヤード業務に大きなエネルギーを割いている場合、フルフィルメントサービスを活用することで部署ごとに、専門の作業に時間を充てることができ、全体のパフォーマンス向上に繋がります。
プロに任せることで、独自でサービスを提供するよりも、圧倒的なスピードとクオリティでお客様への対応が可能となります。
現代において、ECサイト間の差別化が難しくなってきている中、そうしたお客様へのサービスの部分での差別化が競合の一歩先をリードするためのカギとなるでしょう。
また、フルフィルメントサービスを利用することで、多種多様の決済方法の導入も容易になるため、お客様のニーズに柔軟に対応でき、結果的に顧客満足度の向上にも繋がるはずです。
デメリットは大きく分けて2つあり「バックヤードノウハウが蓄積しない」「お客様との直接的な接点が少なくなる」が挙げられます。
フルフィルメントサービスを利用すると、注文から消費者へ商品をお届けするまでの全てをアウトソーシングすることになります。
EC事業者の企業戦略にもよりますが、ECバックヤードのノウハウを持つプロに業務の全てを任せてしまうので、それらを把握したスタッフの育成が難しいという面も持ち合わせています。
受注、カスタマーセンターもフルフィルメントサービス範囲内なので、エンドユーザーからの直接的な声にファーストコンタクトするのはフルフィルメント事業者となります。
適切にEC事業者に声を届ける仕組み、フローを整えていない場合、その重要なカスタマーボイスを聞き逃し、EC事業者のサービス向上が出来ないことはもちろん、大きな問題となるのは、重大なクレームへの対応遅れにより、顧客が離れや、企業価値の低下に繋がりかねません。
全てのEC事業者がフルフィルメントを導入すべきとは限りません。
サービスを利用すればコストが発生するため、会社の事業規模によっては導入しない方が
予算を抑えられる場合も。
導入するべきタイミングとは一体どういう時なのでしょうか。
倉庫の管理費や配送料、作業に携わるスタッフの人件費が負担になっている際には、フルフィルメントの利用を検討してみるのが良いといえるでしょう。また、人手が不足している時にも良さそうです。
ECは事業規模が大きくなるほど一つひとつの業務にさまざまなカスタマイズが加わり、業務が煩雑になります。組織全体の業務が煩雑になり自社だけで処理するのが難しいと感じたら、それがフルフィルメントを導入すべきタイミングだといえます。
フルフィルメントを導入するまでに、ある程度の準備期間が発生します。
そのため、事業を開始した後に利用開始するとなると、各現場にも負担がかかってしまいます。
最初から導入しておけば、スムーズに業務を開始できるでしょう。
導入の際のポイントは4つあり、「導入の目的をはっきりとさせる」「サービス・サポートの範囲の確認」「商品の保管環境の確認」「料金体系の確認」となります。
フルフィルメントサービスといっても無数に提供会社があり、それぞれの「特徴」も「請負範囲」も異なります。したがって自社に最適なサービスを選ぶためには、まずフルフィルメント導入をする目的を明確にする必要があります。
企業の成長段階や抱えている課題によって、導入目的は多岐に渡ります。
前述にもありましたが、一口にフルフィルメントサービスを提供する会社と言っても、その特徴や請負範囲は様々で多岐に渡ります。
本サービス導入も目的が明確になったら、その目的にマッチしたサービス、サポート範囲を兼ね備えている会社の選定をすることが重要です。
1社のみに確認をするのではなく、複数企業の話を聞き、確認、比較した上で決定するようにしましょう。
自社で考える当たり前が、フルフィルメント企業の当たり前とは限りません。
たとえば、物流業において、常温(空調無し)は当たり前で、空調有りの「定温倉庫」や3温度帯を備えているという点はオプションに当たります。
また、衛生状態、セキュリティ(Pマークの取得有無も含む)も重要なチェックポイントなので、保管においては、これらのポイントも自社の方針、コストと見合わせて確認し、検討するようにしましょう。
料金体系に関しても、サービス提供企業によって様々です。
単価もそうですが、「単位」に関しても重要なチェックポイントなので、必ず確認をするようにしましょう。
(注文1”件”当たりなのか、商品1”点”当たりなのかで大きな違いです)
また、初期費用についても見落としがちなので、その点も確認が必要です。
それらを確認した上で、必ず行う必要があるのが「費用全体の月額シミュレーション」を作成することです。
単価だけ並べても比較は難しいため、自社が取り扱っている作業や物量を当てはめて月額シミュレーションを作成し、比較をするようにしてください。
フルフィルメントサービスの導入=アウトソーシングの活用となり、大きな経営判断となるため、しっかりと本サービスにおける「メリットデメリット」の把握をし、その上で自社がフルフィルメントサービスを導入する目的を明確化しましょう。
その後、選定ポイントを元に、しっかりと複数社で比較検討し、信頼できる事業者を選ぶことが重要です。
その後の「スケジューリング」がフルフィルメントサービス導入成功の鍵を握ります。
導入前、移行中、プレ運用期間、本運用と綿密にスケジューリングし、その後の評価軸(KPI等)まで導入する必要があります。
これらは、自社内に熟知した担当がいればいいわけでなく、請負会社と双方で進めていく必要があるため、これらの内容をしっかりと理解し、事業者とのコミュニケーションを深めていくことが重要です。
フルフィルメントや3PL、越境ECに関する記事を多数執筆。豊富な実績やノウハウを持ったエスプールロジスティクスならではの情報を発信しています。