生物多様性(TNFD)

生物多様性への取り組み

TNFD提言に基づく開示

当社グループは、Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(自然関連財務情報開示タスクフォース)(以下、TNFD)の提言に基づき、自然との関連性(依存・影響)の把握および対応検討を開始いたしました。2020年の世界経済フォーラム報告書では、全世界における経済価値の半分が自然喪失により損失する可能性が示されており、自然保全に関する国際的な議論が活発になっています。また、2022年12月には生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で昆明・モントリオール生物多様性枠組が採択され、国際的な自然保全に関する方針および目標が設定されました。当社グループにおいても自然に関する分析や対応策の検討に取り組むことで、気候変動のみならず生物多様性に配慮した持続的な成長を目指していきます。

事業活動における自然への依存・影響関係*

当社グループは、自然への依存や影響の特定、拠点周辺の自然環境の把握を目的に、TNFDが提唱するLEAPアプローチ※1のLocateとEvaluateに該当する分析を実施しました。対象事業は、当社グループにおいて自然資本との関連が特に強いと推察される、障がい者雇用支援事業(=株式会社エスプールプラス)としました。

LEAPアプローチの全体像
(例)農業活動の依存と影響
(例)農業活動の依存と影響

*企業活動は生態系サービスの恩恵によって成り立つ一方で、活動によって自然の状態を変化させており、この相互作用関係をTNFDでは「依存」「影響」と表現しています。

自然との関係性(依存・影響)

自然との関係性(依存・影響)

対象事業について、ENCORE※2を使用し、生態系サービスへの依存と自然に及ぼす影響について分析した結果、農園開設における土地利用の変化や設備設置に伴うGHG排出、肥料生成時の水利用など、自然に影響を及ぼす可能性を特定しました。また、作物育成時や清掃で使用する水、農業活動における気候調整、良好な土壌、昆虫による受粉や害虫の制御など、生態系サービスへの依存度が高いことを特定しました。

農園周辺における自然環境の把握

TNFDが提示する要注意地域の定義を参考に、以下に示すツールを用いて農園周辺の自然環境を調査しました。その結果、エスプールプラスが所有する47農園のうち、4拠点が指定保護区や生物多様性重要地域内に位置することが確認されました。これらの拠点は要注意地域として、廃棄物や排水の管理をより徹底してまいります。また、水ストレスが高い拠点は確認されませんでしたが、樹木の減少や土地の汚染が進んでいる可能性が示唆されたため、今後も事業活動がこれらを助長しないよう努めていきます。

要注意地域の概要と使用したツール
TNFDの評価観点 参照した指標 使用したツール
生物多様性の重要性
  • Key Biodiversity Areas(生物多様性重要地域)
  • Designation(指定保護区)
  • IUCN management category(IUCN保護地域管理カテゴリー)
IBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool)※3
生態系の十全性
  • Ecosystem Condition(生態系の状態)
  • Land, Freshwater and Sea Use Change(土地等の利用変化)
  • Tree Cover Loss(樹木被覆の損失)
  • Invasive Species(外来種)
  • Pollution(汚染)
Biodiversity Risk Filter※4
水ストレス
  • Baseline Water Stress(ベースライン水ストレス)
Aqueduct Water Risk Atlas※5
生態系サービス供給の重要性
  • Resource Scarcity(資源枯渇)
Biodiversity Risk Filter

今後の対応

今回の分析によって明らかになった依存や影響について、エスプールプラスでは、既に資源の保全や自然へ与える影響の軽減のための取り組みを行っております。資源の保全については、水の循環利用や軽石の再利用を実施しており、廃棄物や排水処理についても法令を順守し適切に管理しております。加えて、今後の自然環境への影響を軽減するために、周辺環境調査において生物多様性の重要性が高いと評価された4拠点を中心に、今後も継続的にモニタリングを行ってまいります。また、今後の事業拡大に伴う農園の新設時は、より生物多様性へ配慮した事業活動となるよう、周辺の自然環境を確認するプロセスを組み込む方針です。今後、LEAPアプローチのAssessとPrepareに該当する分析を行い、より一層ネイチャーポジティブの実現に向けて取り組みを推進してまいります。

※1:企業が、自然との接点の発見(L)、依存関係と影響の診断(E)、リスクと機会の評価(A)、対応し報告するための準備(P)を行うためのアプローチ。
※2:UNEP-WCMC(国連環境計画の世界自然保護モニタリングセンター)などが開発したツールであり、事業プロセスごとに自然への依存や影響を把握可能。
※3:UNEP-WCMC などが開発したツールであり、世界の保護区などの情報を一括で把握可能。
※4:WWF(世界自然保護基金)が開発したツールであり、生物多様性関連リスクのスクリーニングと優先順位付けが可能。
※5:WRI(世界資源研究所)が開発したツールであり、世界の地域ごとに水リスクを把握可能。