倉庫に新しい商品が入荷すると、古い商品は棚の奥に追いやられてしまいがちです。そうすると、いつの間にか商品が劣化したり出荷期限を過ぎてしまっていたりして、出荷されることのないまま廃棄しなければならなくなってしまいます。
商品は先入れ先出しを徹底し、長期間倉庫内に在庫が留まらないように工夫することが大切です。そこで今回は、先入れ先出しのメリットや気を付けるべきポイントついて紹介します。
「先入れ先出し」とは、倉庫に保管されている商品を古いものから順番に出庫し、保管する期間をできるだけ短期間に抑えて、商品が劣化しないようにする管理方法のことです。先に入庫した商品から取り出すことからこう呼ばれます。英語で「FIFO(First-In First-Out)」と呼ぶこともあります。その手順は次の通りです。
1. 新しい商品が入荷する
2. 日付の古い在庫をすべて倉庫の棚から取り出す
3. 入荷した商品を倉庫の棚の一番奥に入れる
先入れ先出しは在庫の品質を保持するための基本的なルールとされており、小売業や製造業などの分野では特に重要です。たとえば1月7日、1月14日、1月21日にそれぞれ入庫した商品Aがある場合、注文が入ると1月7日の入庫分から先にピッキングがかかるという仕組みです。1月7日の分がなくなると、次は1月14日の入庫分が引き当てられます。
なお、似た名称の管理手法のひとつに「先入れ後出し」がありますが、先入れ先出しとは異なり、入庫した商品のうち日付が新しいものから取り出すことを言います。英語では「LIFO(Last In Fast Out)」と呼ばれます。
倉庫で先入れ先出しを行う主なメリットは次の2点です。
日付の古い商品から先に販売することで、品質や鮮度が落ちる度合いを最小限に抑えることができます。
「先入れ先出し」が徹底されていないと、棚の手前に並べた新しい商品から順番に出庫してしまい、古い商品が倉庫の奥の方へ入り込んだまま所在が分からなくなってしまう可能性があります。また、販売期限の超過や品質の劣化によって商品として成り立たなくなった在庫は廃棄しなければならず、販売機会の喪失や処理費用の増大につながります。
先入れ先出しを意識して入出庫を行うと、自然と整理整頓が行き届いた倉庫や棚が作られます。
入庫された順に適当に在庫を積み上げたり、本来の棚以外の場所にも置いたりしてしまうと、棚卸しの際に正確な数や入荷日が分からなくなる場合も少なくありません。そうなると全体像を把握するために余計な手間がかかり、時間も手間も増大していきます。
しかし、現場のスタッフが先入れ先出しを徹底していれば、簡単かつ正確に在庫を把握できるため棚卸しの労力がぐっと抑えられ、人件費の圧縮やミスの発生しにくいオペレーションにつながります。
日付が古いものから出荷するオペレーションが規定されている場合、出荷しなければならない商品が棚の奥に保管されていると、出荷のたびに手前にある商品を一度取り出す作業が生じます。これではピッキングに時間がかかってしまい、効率的ではありません。
先入れ先出しを徹底することで、古い商品が常に棚の手前に保管している状態を保つことができ、出荷すべき商品を取り出しやすくなって、出荷までの時間短縮が可能になります。
先入れ先出しにもデメリットは存在します。どんなところがデメリットとなるのか、2点紹介します。
在庫管理を先入れ先出しで行うには、次のようなデータを詳細に管理する必要が生じます。
一つひとつの商品に対して細かい管理情報を入力するのは手間がかかるので、場合によっては専門のスタッフを配置しなければならない場合もあります。すべてのデータを統合的に管理できていないと、かえってデータの信頼性が低くなり、発注や出荷の精度を落とす原因となってしまいます。
データ量が多い場合やスタッフのノウハウが十分でない場合は、誰でも簡単に扱える新たな管理方法を検討したり、在庫管理システムなどを導入するなどの対策を取ったほうがいいでしょう。
データ入力の手間だけでなく、入出庫を担当する現場の業務も煩雑になります。
最初に紹介した1~3の手順を新しく商品が倉庫に入ってくるたびに繰り返さなければいけないために作業工数が増えますし、作業工数が増えればミスも出やすくなります。
作業工数を減らすための対策としては、入荷日によって保管場所を分けて商品が混ざらないようにするなどの方法があります。
先入れ先出しを行う際は、管理データと作業工数の増加に注意する必要があります。
先入れ先出しでは、商品番号や入庫日、製造日、使用期限、出荷期日などさまざまなデータを管理しなければならないことから、管理にかかる手間が増加しがちです。すべての商品情報を一覧で管理できなければ、抜け漏れが発生して正確なデータを把握できない可能性があります。
また、データ管理の工数増加に加えて倉庫の棚を整理するための工数も増加します。入荷時に古い在庫を棚から取り出して新しい商品を奥に入れ、古い在庫を手前に戻すという作業は手間がかかるため、効率的に先入れ先出しを行う工夫が必要です。
先出しを行う際は、見た目が同じ商品であっても入荷日別に仕分けなければなりません。そのため、入荷日別に保管場所を切り分けるなどの対策を取らなければ、商品の見分けがつきにくくなるという問題が起こります。
これに伴い、「作業員によって仕分けのルールが異なる」という問題が生じることもあります。社内全体で仕分けや保管場所のルールを確認しておく必要があるでしょう。
先入れ先出しを行う際には次の3つのポイントに注意しましょう。それにより、現場の作業を効率化できる可能性が高まります。
商品の状態が一目でわかるような工夫を施すのは、先入れ先出しを行う上で非常に重要です。どれが同じ商品なのかを区別できるように、ロットNo.や入荷日、使用期限などが記されているシールを貼り付けると、商品の状態が可視化されるため、分かりやすくなります。
また、カラーシールを利用するのもおすすめです。細かい情報を記さなくても同じ色のシールが貼られていれば同じ商品であることを一目で把握できるので、シールに入荷日などを記入する手間も含めて作業を効率化できます。
整理・整頓・清掃の「3S」を意識し、庫内での作業をスムーズに進められる状態を維持するのも効果的です。
ここで言う整理とは「必要なものと不要な物を分別し、不要な物を捨てること」を表します。整頓は「必要なものを、誰でも必要なタイミングで取り出せる状態にすること」であり、効率的な作業を行う上で必要不可欠な作業です。最後に「汚れのない清潔な状態を保つ」清掃を行うことで、誰でもスムーズかつ気持ちよく先入れ先出しを行える環境を整えることができます。
倉庫に保管する在庫量が多すぎると、品質の劣化や使用期限の超過などで廃棄せざるを得なくなる商品が増加します。また、先入れ先出しを行うために管理するデータや作業工数も増大するでしょう。
適正在庫を見極め、倉庫内の在庫量を増やしすぎずに効率よく運用することが大切です。
先出し先入れはスタッフ全員の意識が統一されていなければなかなか上手く行きません。正確に在庫管理を行うためには、社内の在庫管理業務のルールを明確にし、スタッフ間でしっかりと共有することが大切です。
また、ルールから外れた自己流の作業を行うスタッフがいないか、第三者によるチェック体制を整えるのも有効です。
ここまで、先入れ先出しのメリットや気を付けるべきポイントについて解説してきました。
古い商品から順番に出庫し、倉庫内に長期保管されている商品を残さないことは、品質管理や在庫管理の面で大変重要です。しかし、先入れ先出しの実施はデータ管理や作業工数が増加するリスクも抱えているので、倉庫の商品を一目で把握できる状態にするなど、作業の効率化を進めることが大切です。
社内で先入れ先出しの徹底をすることが難しい場合や、より正確、確実な在庫管理を実現したい場合は、在庫管理システムやアウトソーシングを導入することも方法の一つです。ぜひ様々な方法を検討しながら、あなたの企業にとってベストな管理のスタイルを探してみてください。