安全在庫とは、欠品の発生を防ぐ最低限の在庫のことです。需要は季節や流行、特売などによって変動するため、その流れに柔軟に対応できるよう在庫を確保することが大切になります。
安全在庫に似たワードとして「適正在庫」があります。同じ様なワードのため、意味合いまで似ていると思われがちですが、実際のところは違います。
この2つのワードの違いは、安全在庫が前述の通り欠品を防止することが目的であることに対し、適正在庫は商品や製品を多すぎず少なすぎず、そのショップ(企業)にとって妥当な数の在庫を確保するという点です。
安全在庫を持つことの主なメリットは以下の3つです。
ある商品や製品の欠品を防ぐために在庫数を多めに確保してしまうと、倉庫の保管場所だけでなく、保管する費用も無駄になってしまうのは言うまでもありません。また、余剰の商品や製品が多くなると、管理作業も滞るリスクにもつながります。そのため、最低限度の在庫を把握し、無駄なスペースやコストをカットする安全在庫は重要となります。
商品や製品の在庫はお客様が購入すれば現金、お店(会社)の財産となりますが、商品や製品の売れ行きが悪くなると現金が不足する事態となり、キャッシュフローが悪化します。余剰の在庫がある場合はプライスダウンして在庫処分することもありますが、キャッシュフローの改善は見込めません。
このような事態を回避し、キャッシュフローの改善を図るには、商品や製品の仕入れや生産を必要以上に行わないことが重要です。
安全在庫は在庫で保管する量(個数)を最低限用意するため、ある商品や製品がインフルエンサーによって急遽話題となったなどの予想外の展開に至っても商品や製品を提供できるのが特徴です。そのため、欠品によって購入できなかったお客様が出てしまうのを未然に防げます。
安全在庫量を算出する計算式は以下の通りです。
安全在庫係数×標準偏差「√(発注リードタイム+発注間隔)
また、この計算式で算出する前に以下の項目を計算する必要があります。
欠品を許される割合のことを欠品許容率と呼びます。たとえば、欠品許容率が5%の場合、100個の商品や製品のうち5個までは欠品しても許されます。欠品許容率ではそのまま計算式にあてはめることができないため、「安全在庫係数」に置き換える必要があります。
なお安全在庫係数の算出はExcelの関数「NORMSINV」を用います。
計算式は以下の通りです。
安全在庫係数=NORMSINV(1-欠品許容率)
参考までに欠品許容率と安全係数の早見表については以下の通りです。
欠品許容率 | 安全係数 |
---|---|
0.1% | 3.10 |
1% | 2.33 |
2% | 2.06 |
5% | 1.65 |
10% | 1.29 |
20% | 0.85 |
30% | 0.53 |
商品や製品の在庫に紐ついた「標準偏差」とは、安全在庫の対象となる商品や製品における過去の出庫した数(※ここでは使用・出荷・販売の3つ)から求めます。
なお標準偏差の算出はExcelの関数「STDEV」を用います。
計算式は以下の通りです。
1ヶ月の標準偏差=STDEV(1ヶ月あたりの出庫した数)
ここでの「リードタイム」とは、材料発注に日数間隔と、商品や製品を調達するまでの日数を合計したものです。材料の発注間隔10日、商品や製品調達6日であればリードタイムは16日となります。
ここでは安全在庫の計算式の例について紹介します。
1.65×10×√(10+6)=66 と算出され、安全在庫は66個となります。
お客様に最善のサービスで良質の商品や製品を届けるために重要になってくる安全在庫ですが、安全在庫を持つ上で頭に入れておきたいことがいくつかありますので紹介します。
在庫スペースと資金面で余裕があれば、大量の商品や製品在庫を構えられます。しかし、商品や製品の在庫数を多くし欠品許容率を低くしようとしても、破損や不足のパーツがあったなどで欠品を完全に防げないことを頭の片隅に入れておきましょう。また、急な需要増加が予想を上回る際は欠品となってしまう可能性があります。
リードタイムの数値は需要や時期によって数値が異なるので常に同じような数値を出している訳ではありません。ほかにも商品や製品がメディアで話題となるとリードタイムにも変わってきますので、在庫数だけでなく市場のことも知っておきましょう。
安全在庫は、商品や製品の欠品を防ぐための適した在庫のことです。
前述の安全在庫係数・標準偏差・リードタイムを含めた計算式を用いると適正な在庫を算出する流れとなります。
商品や製品の欠品をゼロにすることは至難の技ですが、無駄なコストや労力を発生させないためにも、安全在庫の仕組みを理解するとともに最適な在庫数を把握しておきましょう。