あらゆるモノをインターネットでつなげるIoTは、生産性向上や業務負担軽減が叫ばれる現代において大きなプラスの効果を生み出すものとしてあらゆる業界から期待されています。もちろん、物流業界も例外ではありません。
そこで今回は、物流業においてIoTを活用するメリットについて解説します。
IoTとは「Internet of Thing」の略で、これまでインターネットに接続されていなかったさまざまなモノがインターネットで繋がることを言います。
これにより、業務効率化や労働力不足の解消、そしてサービス向上に繋がると期待されています。
物流業が抱える問題は大きく3つあり、「労働力の不足」「配送スピードへの期待」「配送(受取方)ニーズの多様化」が挙げられます。
物流業界は、労働集約産業でありながら、他業界と比較すると、長時間労働、低賃金と言われ、人材確保が難しい状況が続いています。
さらに、そんな中、関連法令の改正等で、構造的に今までよりも確保する人数が必要になり、加えて2015年以来毎年最低時給上昇があり、益々労働力確保が難しい時代になってきています。
2000年代に入り、ECは飛躍的な伸びを見せ、今では様々な商品を売買できる主要なチャネルと言っても過言ではありません。
そんな中、商品の差別化とは別に、配送に関する差別化、特にスピードに関しては過剰とも言っていいようなレベルを求められている現状があります。必要な時に、必要な場所に、必要な量配送するためには、実績を元にした傾向値の把握や予測の精度のさらなる向上の必要があります。
消費者のニーズの多様化は「配送」に関しても進んでいます。
今までの主流である自宅まで届けてもらう「宅配」だけでなく、宅配ボックスへの配達、ネコポス、ゆうパケットのようなポストイン受け取り、また宅配ロッカーやコンビニでの受け取りも増えています。
IoTを活用するメリットは、情報収集を効率的に、尚且つリアルタイムに行うことにより、商品や配送状況の見える化やタイムリーなニーズへの対応が可能となることです。
RFID(ICチップ、ICタグともいう)などを活用し、IoT化することで、センサーによる複数商品の同時読み取りもできるようになり、業務効率化に繋がります。
そのデータがクラウド上にある在庫管理システムと連携すると、リアルタイムで在庫状況の確認が
可能になります。
現在でも、宅配各社はポイント毎に通過履歴を残す「トレサビリティ」は実装しており、通過した拠点は確認をすることができます。
IoT化が進むと、物流センターから自身の手元に届くまでのリアルな位置や、温度の変化等も確認することが可能となります。
IoTを導入することによって、商品の品質管理を徹底し、最適な状態での配達が可能になります。
IoT化すると、貨物車の積載情報、空車情報などのデータを収集もリアルタイムに行うことも可能です。
これらの情報をシェアリングすることで配送効率を向上させるプラットフォーマーも出てきています。リアルタイムに情報を共有することで、荷物の少ない同じ方向の貨物車同士の荷物をまとめて配送することが可能になりますし、空いている貨物車を商品の配送をしたい企業間で融通し合うこともできるようになります。
配車が効率化できれば積載率が向上し、積載量が少ない貨物車を何台も手配する必要がなくなるため、配送コストや人件費の削減へとつながります。
設備保全には、故障が起こらないように対応する「予防保全」と、故障後に対応する「事後保全」がありますが、最近では多くの企業が「予防保全」に注力しています。
予防保全ではまず、センサーを利用して大量のデータをストレージに蓄積します。
そして、そのデータを最新のAI・アナリティクス技術でデータを分析し、これまで人間が勘で行ってきた判断を機械が代わりに行います。
センサーを活用することで、熟練の技術者でも気づかないような些細な変化を察知できたり、立ち入るのが困難なエリアにある設備でも監視できるといったメリットがあります。
また、複数のデータを分析することで、故障の予兆を察知できるようにもなります。
IoTを導入することで、ユーザーは正確な情報をリアルタイムで得られるようになります。
「スマートバス停」の実証実験が近年IoTの実践例として行われています。
これまでバスは、悪天候や道路の渋滞で遅れている場合も、バス停で待っている乗客に運行状況を伝えることができませんでした。また、ダイヤ改正に伴い時刻表を変更する際はそれぞれの停留所の時刻表を貼り替えが
必要でした。
IoTを活用したデジタルサイネージをバス停に設置することで、運行状況の連絡や時刻表の変更などを遠隔で行えるようにしました。
乗客側はバスの運行状況がリアルタイムで把握できるため、顧客満足度向上につながることでしょう。
最近ではさまざまなIoTが物流業界で活用されています。ここでは、代表的な4つのIoTを紹介します。
RFIDとは、「RFタグ」という商品情報が書き込まれたタグを「リーダ」という専用の機械で読み取るシステムのことです。無線通信を利用しており、ある程度離れていてもタグを読み取ることができます。そのため、倉庫の棚卸の際に高所にある荷物を下ろさず数えることや検品作業の際に大量の商品をまとめてチェックすることができ、庫内業務の効率化を実現できます。
WMSは「倉庫管理システム」とも呼ばれ、庫内業務を効率化するための機能が揃ったシステムです。ピッキングにおける最適な導線を算出したり、倉庫内の在庫を自動的に管理したり、ロケーション管理をおこなったりすることができます。
人の手で在庫管理やロケーション管理をしようとすると処理が煩雑になり、膨大な時間がかかるばかりかヒューマンエラーが起こるリスクもあります。WMSを導入すれば作業が自動化されてスムーズな処理が可能となり、ヒューマンエラーの削減が期待できます。
TMSは配車を効率化するためのシステムのことです。倉庫から出荷された商品を配送先に届けるための貨物車が現在どの地点を走行しており、どのような荷物を積載しているのかを、オンライン上でリアルタイムに可視化することができます。作業効率が悪化しているトラックや業務量が多くなりすぎているトラックを把握することで、全体の業務量を調整して生産性向上につなげます。
他にも、燃料の使用量を算出したうえで全体の作業量が均等になる値を自動的に計算する機能などが備わっています。
自動倉庫システムは、商品が倉庫に入庫してから注文が入り出荷するまでのプロセスを一元管理するオートメーションシステムです。倉庫管理システムや倉庫内のさまざまな作業を制御する機能も組み入れて倉庫を独自の運用体制にカスタマイズし、入出庫作業の自動化を促進します。
物流業務においてIoTの導入を検討する際は、自社の課題がどこにあるのかを明確にすることが大切です。現在の運用体制を振り返り、作業が非効率になっている部分がないか、あるのであればそれは何が原因となっているのかを明らかにしたうえで、どのIoTを導入すれば課題を解決できるのかを考えます。
IoTの導入にはコストがかかるため、課題を見極めず、やみくもにシステムを選定してしまうと十分な費用対効果が得られない可能性もあります。自社の課題にマッチしたIoTを冷静に選定できるかどうかがIoT導入成功のカギとなります。
IoTを活用した課題解決の事例の一つに「倉庫の経路案内ソリューションを導入して、出荷効率を30%改善した」という例があります。
これまでその会社では、ピッキングの移動経路は作業者任せになっており、熟練作業者と初心者で生産性に差がある状況でした。それに加え、物量が増えて労働力が減っている中で、初心者の生産性を高める必要がありました。
そこで、ピッキングの経路の最短距離を画像と音声で指示するナビゲーションシステムを導入しました。
本システムでは、作業者が端末で宣言した現在地情報と在庫商品の座標情報をもとに、ピッキングまでの最短移動経路を仮想マップ上で割り出し、画像と音声で指示します。
同システム活用により、初心者・上級者の生産性の差が無くなり、短時間勤務者や高齢者など、多種多様な人材の雇用促進につながりました。
また、生産性が一定になることで効率的な現場運営を実現。システムでは、外国籍労働者の増加を見据えて、多言語対応が可能です。
物流(ロジスティクス)の世界では、特に配送・倉庫の在庫管理において、IoTの活躍の場が急速に
広がっています。
IoTを駆使した倉庫内の在庫管理や輸送の効率化によって、労働力不足の解消、資源やエネルギーの有効活用がさらに促進される見込みです。また、ドローンや自動運転車を使った配送サービスが注目されています。
まだ法整備などのハードルがあるものの、特にドローンは技術的には実用可能なレベルにまで開発が進んでおり、大きな期待を背負っています。