施工管理の人手不足が深刻になった背景と問題解決の糸口
施工管理は、工事の円滑な進行に欠かせない職種です。そのため、人手が不足すれば現場の作業をスムーズに履行できず、大きな損害を被る恐れもあります。
この記事では、施工管理の人手不足が深刻化する背景やその原因、問題解決のための糸口をご紹介します。
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人手不足が深刻な建設業界
人手不足は多くの分野で共通する課題ですが、その中でも建設業界は特に働き手の不足が深刻な業界として知られています。
厚生労働省がおこなった労働経済動向調査(令和6年8月)の「正社員等労働者過不足判断D.I.」によれば、建設業は「学術研究,専門・技術サービス業」と「医療,福祉」に次いで正社員が不足している業界とされています。
上記の表は、「D.I」の数値が高いほど正社員が不足していることを表しています。建設業界は3ヶ月ごとの過去調査でも高水準を維持しており、慢性的な人手不足である現状が窺えます。
施工管理の人手不足が進んでいった背景
働き手が不足する建設業界の中でも、特に人手不足が深刻だといわれている職種が施工管理です。
施工管理とは、工事を計画通りに進めるためのリーダーとしての役割を担う職種です。現場の直接的な管理はもちろん、以下のような幅広い業務を担います。
- 工事計画の立案
- スケジュール・進捗の管理
- 施工品質の管理
- 原価・売上の管理
- 作業員の安全の確保
- 役所などへの提出書類の準備
- 発注元・協力業者などとの折衝
施工管理は、業務の多様性から、必要とされる人材のレベルも高度です。論理的思考力、コミュニケーション能力、柔軟性や臨機応変さなど、幅広いスキルが問われます。また激務の傾向もあり、ただでさえ働き手の不足が深刻化する建設業界において成り手を見つけるのは難しく、人手不足に歯止めがかからない状況です。
施工管理の人手不足が解消しない主な原因
続いて、施工管理の人手不足の解消が進まない原因を4つに分けてご紹介します。
労働環境が若手のニーズに合わない
1つ目の原因は、施工管理の労働環境が若者のニーズとかけ離れていることです。
近年は、若い世代を中心に、プライベートの時間を尊重するワークライフバランスの考え方が浸透しています。慢性的な長時間労働や、悪天候やトラブル対応による不規則な出勤を避けにくい施工管理の仕事は、このような需要と距離があります。
もともとの女性比率の低さ
2つ目の原因は、従来から続く女性の比率の低さです。
力仕事も求められる建設業界は、体力に優れた男性の仕事というイメージが強く、女性の成り手が少ない傾向にあります。少子高齢化社会における人手不足の対策として多くの業界で女性の社会進出が進む中、建設業界にとっては大きな足かせとなっています。
知識や技術継承の問題
3つ目の原因は、施工管理に欠かせない高度な知識・技術の継承の問題です。
施工管理は、意欲や体力だけではこなせない広汎なスキルが必要な仕事です。新人が独り立ちするためには先輩から知識や技術を学ぶ必要がありますが、それらは個人の中に眠る暗黙知として存在するケースも多く、継承に時間がかかります。
また、施工管理が慢性的に不足している現状では、ゆっくりと研修を行う余裕もありません。結果として経験が浅いまま新人が現場に出され、仕事をこなせず自信を失い辞めてしまうという悪循環が生じています。
建設業界全体へのイメージ
4つ目の原因は、建設業界全体に対するイメージです。
建設業界の仕事にはどうしても、体力的・精神的に辛く厳しい仕事というイメージがつきまといます。休みは少なく、泥だらけになって働き、上下関係も厳しく、ときには怪我をするリスクまで……といった想像をする方は少なくないでしょう。
もちろん、実際の職場環境や待遇は千差万別で、いわゆるホワイト企業に該当する雇い手も存在します。しかし、漫然と広がるネガティブな業界イメージが求職者に二の足を踏ませる原因となっていることは否めません。
施工管理の人手不足を解消するには
では、施工管理の人手不足を解消するためにはどのような対策が必要なのでしょうか。5つの解決策をご紹介します。
労働環境や福利厚生の改善
抜本的な対策となるのが、労働環境・福利厚生の改善です。若者が求めるワークライフバランスを意識しつつ、建設業界の暗いイメージを吹き飛ばせるような改善を進める必要があります。以下はその具体的な施策の一例です。
- 長時間労働の見直し
- 人員配置の見直し(例:施工管理補佐を置く、相談役となる上司を置く)
- 残業時間の削減
- 休日の臨時対応の削減
- 工事完了後のリフレッシュ休暇の導入
- 交通費や住宅手当など金銭的サポートの充実
- パワハラの相談窓口の設置 など
労働環境・福利厚生の改善施策は、内部で実行するだけでは人手不足の解消に結びつきません。自社サイトや求人媒体で施策の内容をアピールすることで、未来の施工管理候補となる高度な人材の関心を集めやすくなります。
女性が参画しやすくなるための環境整備
女性が無理なく施工管理をこなせる環境の整備も重要です。少子高齢化が進む状況のもと、女性の働き手の価値は向上しており、企業イメージ改善の観点からも重要な課題となりつつあります。
以下は、女性の参画に向けて検討したい施策の一例です。
- 女性が安心して利用できる更衣室や仮設トイレの設置
- 育児支援制度の充実
- 柔軟な労働時間への対応(例:可能な範囲でのフレックスタイム制の導入)
- セクハラなどの相談窓口の設置
- 女性の複数人数の同時雇用 など
デジタル技術を活用し業務効率を上げる
デジタル技術の活用で施工管理の業務効率を改善していくことも、間接的な人手不足の解消策となります。現在と同等程度の人数のままでも、デジタルの力で施工管理の工数を減らせるためです。
デジタル技術の施工管理への活用は政府も推進しています。たとえば国土交通省は、中小建設業の経営者に向けて「ITを活用した現場の生産高度化について~e施工管理のすすめ~」という文書を提供しています。この文書の中では、特に情報共有やコミュニケーションに関して、デジタル技術で無駄や無理を省くことの重要性が語られています。
施工管理では、発注者や現場主任はもちろん、協力会社や資材販売会社ともやり取りを行います。このようなコミュニケーションの内容を一元的に管理できるツール(例:各担当者がスケジュール・進捗状況をひとめで把握できるツール)を導入することで、業務効率は飛躍的に高まります。
外国人労働者を受け入れる
外国人労働者の受け入れも、施工管理の人手不足解消に向けた一手となります。既に取り組みは進んでおり、国土交通省の「建設分野における外国人材の受入れ」によれば、2022年時点の建設業界における外国人労働者の数は11万6,789人でした。2012年時点の同数値は1万3,102人であり、ここ10年間で9倍近くにまで急増しています。
ただし、施工管理は建設業界の中でも高度な知識・技術が欠かせない職種です。日本語での流暢なコミュニケーションも必須であることから、外国人労働者の即戦力としての雇用は難しく、数年かけてじっくりと育成していく長期的な視点が求められるでしょう。
派遣スタッフの活用
施工管理の人手不足が喫緊の課題である場合には、派遣スタッフの活用が有効です。
ここまでご紹介してきた4つの解決策は、求職者からの応募を待ったり、人材を育成したりと、いずれも効果が出るまでに時間がかかります。一方、自社に適したプロフェッショナルな派遣スタッフと契約を結ぶことができれば、ただちに人材不足を解消できます。進行中の案件に欠員が出た場合も速やかに穴埋めが可能です。
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まとめ
施工管理は建設業界の中でも特に人手不足の深刻な職種です。その背景には、広汎な能力が求められることや、激務であることなどが挙げられます。
施工管理の人材不足の解消には、福利厚生の改善や女性が働きやすい職場環境の構築など、抜本的かつ長期的視野での改善が必要です。早期の解決を目指したい場合は、ぜひエスプールヒューマンソリューションズの専門人材派遣サービスのご活用をご検討ください。