人材派遣とは?企業側のメリットや活用すべきシーンについて解説
人材の確保が企業の大きな課題として挙げられる今、人材派遣が注目を集めています。しかし、人材派遣をどのようにして活用すれば良いのか、どんなメリットがあるのかわからないという担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、人材派遣の仕組みやメリット・デメリット、活用の際の注意点について解説します。
目次 []
人材派遣とは
まずは、人材派遣とは何か、その概要を解説します。
人材派遣の仕組み
人材派遣は、派遣元企業と雇用関係にある派遣社員が派遣先企業で就業する仕組みです。派遣社員は派遣先企業で業務に従事し、給与などは派遣元企業が支払います。
- 派遣元企業:派遣社員と雇用関係にあり、派遣先企業とは労働者派遣契約を締結している
- 派遣先企業:派遣元企業と労働者派遣契約を締結しており、派遣社員に対し業務の指揮命令を行う
- 派遣社員:派遣元企業と雇用関係にあり、派遣先企業の業務に従事する
整理すると以下のような図になります。
人材派遣の形態
人材派遣には、有期雇用・無期雇用・紹介予定の3種類の形態があります。
- 有期雇用:派遣元との契約に期間の定めがあり、最大3年間とされている雇用形態。「高度な専門知識や技術」「特定の経験」「満60歳以上」という条件を満たせば5年の契約期間が認められる場合もある
- 無期雇用:派遣元との契約に期間の定めがない雇用形態
- 紹介予定:最長6ヵ月の派遣期間終了後、派遣先に雇用される前提の雇用形態
人材派遣におけるルール
労働者派遣法において、派遣先の同じ部署に派遣社員が在籍できる期間は最大3年間と定められています。人材派遣は一時的な業務に対応するための方法という前提のもと、3年以上の人材派遣が必要な場合、派遣先企業は直接雇用すべきという考えが反映されています。
人材派遣と人材紹介の違い
人材派遣と似た仕組みに人材紹介があります。この2つの違いについて、以下の表にまとめました。
人材派遣 | 人材紹介 | |
---|---|---|
企業間の契約 | 労働者派遣契約 | 有料職業紹介契約 |
雇用元 | 人材派遣会社 | 受け入れ先企業 |
選考 | 実施不可 | 実施可能 |
料金体系 | 派遣料金(稼働時間*時間単価) | 紹介手数料(入社後) |
人材派遣は、企業が業務を円滑に遂行するための労働力を提供することを目的としています。一方、人材紹介は採用支援を目的としており、求人票の作成、マッチング、選考プロセスの調整、諸条件の交渉などがサービスの範囲となります。
企業が人材派遣を利用するメリット
企業が人材派遣を活用するメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 繁忙期など必要な時期に人材を確保できる
- 専門性の高い人材を確保できる
- 業務の効率化が期待できる
それぞれ詳しく解説します。
繁忙期など必要な時期に人材を確保できる
1つ目のメリットは、繁忙期など必要な時期に人材を確保できることです。例えば、繁忙期に備えるために正社員を採用した場合、業務が落ち着いた際に任せる業務がなくなり、最適なリソース配置に悩むことになるかもしれません。
人材派遣であれば、一時的な業務ボリュームの増加に対してスポット的に配置することが可能です。正社員のように面接を行うこともないので、必要なときにタイムリーに人員を確保できます。
専門性の高い人材を確保できる
2つ目のメリットは、専門性の高い人材を確保できることです。財務や人事など、専門的な知見を持った人材が派遣会社に登録しているケースは多々あります。正社員として採用することが困難なスペシャリストを必要なタイミングで確保できるのは、人材派遣の大きなメリットといえるでしょう。
業務の効率化が期待できる
3つ目のメリットは、業務の効率化が期待できることです。コア業務と呼ばれる企業活動上重要な仕事を正社員が担い、コア業務に付随して発生するノンコア業務を派遣社員に任せることで、業務を効率化できます。
多くの企業では、正社員がコア業務・ノンコア業務をいずれも担当することで負担が増え、生産性が低下する事態が発生しています。人材派遣を活用し業務の効率化に取り組めば、生産性の向上にもつながるかもしれません。
企業が人材派遣を利用するデメリット
一方、人材派遣を利用することで発生するデメリットには以下の2点が挙げられます。
- 業務範囲が限定される
- 派遣期間に制限がある
それぞれ詳しく解説します。人材派遣を利用する際には、メリットとあわせてこれらのデメリットも把握しておきましょう。
業務範囲が限定される
1つ目のデメリットは、業務範囲が限定されることです。派遣社員に依頼できる業務には制限があり、契約書に記載されていない業務を依頼することはできません。自社の状況が変わり、依頼したい仕事が新たに見つかった場合は、派遣元企業に相談し新たな派遣社員を迎え入れるか、契約内容を見直す必要があります。
正社員のように柔軟に業務を任せるのが不可能である点は認識しておきましょう。
派遣期間に制限がある
2つ目のデメリットは、派遣期間に制限があることです。労働者派遣法において人材派遣は臨時的・一時的な働き方とされており、同じ部署での就業は最長でも原則3年までというルールがあります。
派遣社員がどれだけ優秀な人材であっても、就業期間があらかじめ決められているため、期間が終了する際には他の社員が派遣社員から業務を引き継ぐか、別の派遣社員を迎え入れる必要があります。業務を引き継ぐ際には社員の業務負荷を増やすことになり、別の派遣社員を迎え入れる際には改めて業務の指示などが必要になるため、企業にとっては工数面のコストがかかるでしょう。
人材派遣が禁止されている職種
人材派遣が禁止されている業務もあるので、あらかじめ認識しておきましょう。以下の仕事は人材派遣が禁止されています。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 病院などの医療関係業務
詳しくは、厚生労働省の「労働者派遣事業を行うことができない業務は・・・」を参考にしてください。
人材派遣を活用すべきタイミング・シーン
どのような状況の時に人材派遣を活用すべきなのでしょうか。そのタイミングやシーンについてご紹介します。
繁忙期の人手が足りない
1つ目は、繁忙期の際に人手が足りない場合です。
新たに正社員で採用しようとすると、入社までに面接などのリードタイムがあり、本当に人手が欲しいタイミングに間に合わないかもしれません。しかし、人材派遣であれば面接などを行わずタイムリーに必要な人材を確保できます。
社員の一時的な休業による欠員
2つ目は、社員の一時的な休業で欠員が発生する場合です。急な休業であってもスピーディーに人材を確保できます。そもそも人材派遣は企業の一時的な業務に対応するための仕組みであり、ニーズに合致しています。
また、一定期間が経てば社員が復帰するといった状況の場合、新たに正社員を採用することにはリスクが伴います。該当社員が復帰すると、新規で採用した社員に任せる仕事が見つからない場合があるからです。しかし、人材派遣であれば就業期間が定められているため、長期的に人員を持て余してしまう心配がありません。
採用活動がうまくいっていない
3つ目は、採用活動がうまくいっていない場合です。人手が足りていないために業務負担が大きくなり既存社員が疲弊するなど、組織運営に大きな影響が出始める前に、人材派遣の活用を検討しましょう。ノンコア業務を派遣社員に任せるだけでも既存社員の業務負担を軽減でき、採用活動を立て直す余裕が生まれるかもしれません。
人材派遣を活用する際の注意点
最後にあらためて、人材派遣を活用する際には以下の点に注意しましょう。
- 人材派遣が禁止されている業務があること
- 派遣社員の就業期間には最長3年という定めがあること
- 契約書面に記載のない内容の業務は依頼できないこと
- 派遣社員の指定はできないこと
派遣社員を受け入れる際には、どのような業務を任せるのか、どういったスキル・経験があれば遂行できるのかを明確に定義する必要があります。ミスマッチによるトラブルを予防するためにも、事前準備を丁寧に行いましょう。
また、人材派遣が禁止されている業務がある点、派遣社員を選考などで指定することはできない点にも注意が必要です。
まとめ
ご紹介したように、人材派遣の活用を検討する際には、就業期間に定めがあることや契約内容以外の業務を任せることができないなど、複数の注意点が存在します。
一方、必要なときに適切な人材を、通常の採用活動よりも短いリードタイムで確保できるメリットがあり、直面する業務上の課題にタイムリーに対応できます。
業務遂行における課題を人材派遣で解決し、効率的な組織運営を目指しましょう。