ここ数年、日本でも越境ECが盛んになり、EC利用者数が増加しています。
その要員の一つとしては、日本の製品が諸外国の方から、「高品質で安全」と高い評価を受けていることが想定されます。
越境ECとは、多言語多通貨対応している通販サイトを通じて行う国際的な電子取引のことです。
基本的には、海外の消費者に向けて日本の商品を販売するビジネス形態を指します。
近年では海外のECモールに出店(出品)し、外国消費者へ販売する形態も広義で使われています。
2014年~2018年の間、越境ECの市場規模の伸びは、日本で1.4倍、米国で1.6倍、中国で2.3倍となっています。
2018年の越境EC市場規模は約74兆円(約4000億ドル)。
経済産業省によると、2020年には109兆円に上ると予測されています。
越境ECの市場規模については、海外進出の重要性のページでも詳しく紹介しています。
越境ECの市場が年々拡大し続ける要因についてご紹介します。
2019年3月現在、世界のインターネット普及率は56%です。
これは、昨年より10%高い数値となっており、年々増え続けています。
発展途上国の低価格スマートフォンが普及し、モバイル端末からのインターネット接続が拡大したことが大きな要因となっています。
特にASEAN地域、アフリカ新興国などで、大きく普及しました。
成熟期フェーズに入ってもおかしくない米国、欧州、中国市場のEC消費は、いずれも二桁成長を維持しています。
2017年と2018年を比べると、中国が1兆1000億ドルで35%増、米国4,600億ドルで16%増、英国1,100億ドルで18%増となっています。
モバイル端末普及によるEC消費の伸長が目覚ましいASEANでは2025年までに、タイが33%増、ベトナムは43%増、インドネシアでは300%増を見込まれており、GoogleやAmazonなどの巨大企業も次々にマーケットへの投資を開始しています。
訪日外国人の数は着実に増えおり、2015年の1,970万人から2018年には3,190万人と62%増となっています。
その9割近くがアジア圏の国からの観光客であり、日本の消費財や食などへの興味・関心が強い外国人が買い物目的で訪日する傾向が見受けられます。
帰国後も気に入った商品をインターネットで検索し、購入するファンも増えています。
海外出店を目指すとなると、国内以上に時間もコストも消費してしまいますが、越境ECがあれば実店舗を持たずとも、海外の顧客を獲得することができます。
海外へ商売を広げる際は、まず越境ECを導入して様子を見てから、出店準備を進めるのも良さそうです。
日本製品への信頼は高く、訪日した旅行客が日本で購入した製品を自国に帰省した後に購入するということも。
また、中国に関しては訪日して購入するよりも、越境ECで購入された金額の方が高いというデータも発表されています。
経済産業省のレポートによると、2022年までに日本や中国からアメリカが購入する金額は2018年の1.69倍、中国が日本やアメリカから購入する金額は2018年の1.64倍にまで成長すると予測されています。
成長し続ける越境EC市場に参入する企業も多い中、実際に越境ECを開始することでどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
具体的にわかりやすくご紹介します。
少子高齢化による人口減少が叫ばれる日本市場。
残念ながら市場の規模が縮小傾向にあることは否めません。
デジタル化が進み、多くの人が手軽にECを利用できるようになったとはいえ、人口の観点から将来性を考えると、先行きが明るいとは決していえない状況です。
一方、人口約14億人の中国や6億人を超えるASEAN市場、購買力の高い欧米市場など、世界の市場人口は拡大傾向にあります。
そんな中、言語・通貨の壁を破るテクノロジーの発展により、世界のどの国へも、またどの国からも、容易に巨大市場へアクセスできるようになりました。
国連が発表している予想によれば、2019年現在77億人の世界人口は、2050年までに97億人、2100年頃には110億人まで増加することが見込まれています。
今後30年の間におよそ25%の人口増があるということは、それだけの人々がEC市場に流入してくる可能性があることを意味しており、そこには大きなチャンスが眠っているのです。
現在、国内市場では類似商品との差別化、コスト勝負などが激化しています。
しかし、越境ECでは、商品の開発ストーリーやその歴史、「日本ブランド」などを訴求し、対象国の安価品とは異なる品質と高価格帯でのブランディングが可能となります。
国ごとに通貨単位や言語が異なるため、商品情報をすべて多言語化する必要があります。
日本国内のような多様な決済手段が用いられるのは一部先進国のみであり、銀行口座やクレジットカードが機能していない国もあります。
そのため、価格帯とターゲット層が使う決済手段を事前に調べ、金流を段取りすることが大切です。
しかし、モールを活用する場合には、この手間が省略できます。
売り場に限らず、食品や化粧品、電化製品や一部アパレル商品などは各国の法律によって規制されています。
そのためそれぞれに認証や届出が必要な場合があり、各国が定める書類の提出はハードルが高い現状があります。
世界最高水準の物流インフラを誇る日本国内と同じように海外物流を考えてはいけません。
多くのEC事業者は、日本から商材を輸出するだけでも壁にぶつかります。
輸出するために、「INVOICEの作成」「船便・航空便の手配」「商品×対象国毎に異なる関税の算出とその徴収方法の設計」が必要となってきます。
また、「対象国到着後の国内物流」も検討が必要です。
法律とは別に、輸送する商品によっては制限を受けるため、まずは自社商品がその国で「売る事ができるのか」を確認し、その後「送る事ができるか」のチェックが必要不可欠です。
越境ECをスタートするには、まずは準備を整えることが大切です。
ここからは、越境ECを展開するまでの手順をご紹介します。
まず最初に、海外向けに販売していきたい商品を選定していきます。
国によって輸送できるものとできないものがあるので、入念に調べておきましょう。
また、越境ECを利用しなくても現地で購入できるものは、収益が見込めないので避けた方がいいでしょう。
販売する商品が決まったら、ターゲットを検討していきます。
国、年齢、収入、家族構成、趣味まで、細かく設定することが重要です。
ターゲットがあいまいなままでは販売促進の方法も定まらないので、商品を販売しても消費者の目まで
届きません。
また、国によって購入に至るまでのプロセスも異なるため、現地の情報を事前に調べておく必要があります。
最後に、どういったサイトで出店するかを決めましょう。
出店方法は大きく分けて5つあります。
①日本で独自の越境ECサイトを構築する
②現地法人を設立し、独自のECサイトを構築する
③現地のECサイトに出店する
④日本の越境ECサイトを使用する
⑤越境EC進出支援サービスを利用する
①と②は独自に開発する必要があるので、サイトを構築するまでの時間とコストが発生します。
また、手続きなどの面で現地の言語に対応しなくてはいけないので、人材を確保する必要もでてきます。
③は現地の消費者からの信頼もあり、消費者が日頃から使用している決済方法が使用できるので、販売促進につながることが期待できるといえるでしょう。
④に関しては、難易度が低い代わりに出店する越境ECサイトによっては手数料が高くついてしまう可能性も。
また、大きな集客はあまり見込めないかもしれません。
⑤は各社によって対応が異なります。言語や手続きなどをプロにおまかせできるのが嬉しいポイント。
なお、エスプールロジスティクスでは台湾での販売に関しても運営支援しています。
越境ECを始めるためには、輸入規制やどのような業務形態で海外と取引するのかなど、検討すべき事項がたくさんあります。
今回はその一部を紹介します。
越境ECは海外との輸出入となるので、関税法によって制限されている商品があります。
輸出入の際、商品によっては関税法で規制がかかる可能性があります。
例えば、中国は古着の輸入が禁止だったり、中古機器の輸入には現地確認が必要になります。
輸出入の許可リストは、各国の税関ホームページに掲載されているので、取り扱う商品が販売国で輸出入が禁止されていないかどうかを確認するようにしましょう。
越境ECで商品を送る際には、国際郵便の「EMS」がよく使われます。
前述した輸入規制をクリアしたとしても、EMSで送れないものも存在するのです。
例えば、ジュエリーや貨幣などの貴重品や食品、リチウム電池などは送ることができません。
また、EMSで配送できる荷物は基本的に最大の長さが1.5m以内、長さ+横周3m以内、重量30kgまでです。
実は、国際間輸送できるのはEMSだけではありません。
家電など大型の商品を輸送する際には、他の輸送サービスも併せて検討してみましょう。
日本から海外に商品を発送する場合、商品を受け取る消費者に関税を支払う義務が生じます。
したがって消費者が払う金額は「商品代金 + 消費税 + 送料 + 関税額」となるのです。
せっかく安く販売できたと思っても、送料や関税がかかることを忘れてはいけません。
関税の金額は商品によって異なります。
関税が高いのは毛皮のコート(20%が目安)や、革を使って作られている履物(30%または1足につき4,300円が目安)となります。
その他、洋服やバッグ、お茶などにも10%程度の関税が課せられます。
販売する商品にどのくらいの関税がかかるのか、税関のホームページで確認しましょう。
国内への発送と比較すると、配送料は高額になります。
配送方法にもよりますが、比較的速く国外へ商品を届けることができて追跡も可能なヤマト運輸の国際便を利用した場合、10kg(100サイズ)の荷物を関東からアメリカへ配送する料金は8,850円(定価)。
同じ条件の荷物を関東から沖縄に送る場合は2,490円(定価)ですから、配送料にどれほどの差が出るかが分かるでしょう。
国外への配送を取り扱う業者はたくさんありますので、自社の商品をどの方法で送るのがベストなのか、よく検討する必要があります。
※配送料金に関しては、ヤマト運輸のサイトを参照しております。
越境ECでは販売先によって法律が異なるため、それぞれの国に合わせて柔軟に対応を変えていく必要があります。
事前の調査を怠ると想定外のトラブルを引き起こしてしまう可能性があるので、新しい国で商品の取り扱いを始める場合は、どんな手続きが必要なのかをしっかりと調べておくことが大切です。
日本円で取引される国内市場とは異なり、越境ECは異種通貨で取引されるため、為替相場によって売上が大きく変動する場合があります。
例えば対ドルで円高の場合は、売上のドルを円に換金する際、受け取る金額が大きくダウンすることになりますし、逆に円安の場合は売上のアップにつながります。
海外向けの商品を販売するには、海外進出して現地法人を構える方法や現地の既存ECモールに出店する方法など、さまざまな方法があります。
それぞれのメリットとデメリットはどのようなものでしょうか。
両方を把握し、自社にあった出店方法を選択しましょう。
越境ECではなく、現地法人や支店を開設して出店する方法もあります。
現地法人や支店を開設するのには初期コストがかかり、なかなかハードルの高い作業です。
特に現地法人の場合には、親会社と会計を分けて行う必要があるため、税務・労務・登記などに関する資料を用意して手続きをする必要があります。
それに加えて現地に事務所を設けて、従業員を雇ったりと、何かとコストがかかります。
一方で、発送費用のコストが抑えられたり、素早く出荷対応ができたり、収益性が高いなどのメリットも
あります。
越境ECとして、日本にいながら現地のモールサイトに出展する方法もあります。
そのうち米国の現地モールには、大きいものから小さいものまでさまざまなスケールのサイトがあります。
例えば、ハンドメイド品を扱う越境ECサイト「Etsy.com」や、品揃え豊富なファッション越境ECサイト「Farfetch」などです。
また、以前は現地法人でないと出店できなかった中国の現地モールサイトでも出店できるようになってきました。
2013年に「天猫国際(TmallGlobal)」、2014年に「JDWorldWide(京東全球購)日本館」が誕生し、現地法人以外の企業が越境ECで出店しています。
現地法人と比べて初期コストがかからず、気軽に始めやすいというメリットがあるため、国ごとに存在するモールを調べてみるとよいでしょう。
海外販売に対応している日本国内のECモールサイトへ出店する方法も考えられます。
楽天やAmazon、Yahoo!ショッピングなどがその代表例です。
国内のプラットフォームなので扱いやすく、商品説明の翻訳機能などがあらかじめ用意されている場合も
あります。
ECモールを利用する場合は、利用料や販売額に応じた手数料などを支払う必要があり、自社ECサイトよりも利益が下がります。
また、決まったプラットフォームを利用するため他社との差別化が難しいことがデメリットとなる可能性もありますが、「海外の言語に対応できない」「海外の越境ECモールについての知識がない」といった問題を抱えている企業にとっては、簡単に越境ECに対応する近道と言えるでしょう。
ECモールに頼らず自社で越境ECに対応したサイトを作る方法も考えられます。
最近では越境ECに対応するプラットフォームも数多く登場しており、テンプレートからデザインを選択するだけで機能性の高いサイトを制作できたり、ワンタッチで商品ページを英語化できたりするサービスもあります。
現地の商習慣の把握に苦労する可能性もあるため、ある程度現地の言語に詳しいスタッフがいたほうが心強いものの、システムの力を借りることで、ある程度必要な対応はできるでしょう。
越境ECに特化したプラットフォームでは世界中のローカルな決済手段に対応しているものもあるため、自社のブランドを育てていく意味も込めて自社ECを広げていくこともブランディングの選択肢の一つとなります。
実際に、エスプールロジスティクスで越境EC展開のサポートを行った事例を紹介します。
共働き率が高い台湾で働く女性を対象に、「自分ご褒美」として肌ケア商品を訴求しました。
SNS映えする商品特性を活かし、台湾でも日本の広告素材を活用したSNSマーケティングを展開し、自社サイトに誘導しました。
当初は国内EC在庫からそのまま台湾ユーザーへの直送を開始し、リスクを最小限に抑える方法を取りました。
途中から台湾倉庫に在庫を置き、台湾国内での発送代行を開始し、安価な台湾国内物流をエンジンに年商3億円まで成長し国内よりも高い収益率を実現しました。
最近ではECでの販売も人気になってきたお好み焼きの台湾国内におけるEC展開を推進。
日本人にとっては古くから親しんできたお好み焼きですが、台湾国内においてはお好み焼きのEC市場自体が醸成されていませんでした。
そこでまずはFBやInstagram上の広告を展開することで「ECのお好み焼き」の認知を拡大。
合わせて購買力の高い台湾大手企業の株主及び従業員向け福利厚生サイトに商品を掲載しました。
また元々お好み焼きを好む層にはGoogle広告で確実に売り上げにつなげることで、「市場の醸成」と「売り上げ拡大」を同時に達成しました。
現在では1枚500円ほどの商品が2,000~3,000枚程度の売れ行きを示しており、今後は焼きそばやたこ焼きなど他の商品展開も模索しています。
越境ECでは、国内ECと同じ対応をしていても思うような成果が得られなかったり、思わぬトラブルが生じたりする場合があります。
では、具体的にどのようなことに気をつけるべきなのでしょうか。ここでは7つのチェックポイントを紹介します。
同じ年齢で似たような年収、家族構成、趣味といっても、国によってニーズはさまざまです。
また、キャンペーンやセールが行われる時期も異なるので、販売する国の情報を常にキャッチしておく必要があります。
自社で越境ECサイトを構築する場合は、多言語対応にすることが必須と言えるでしょう。
多言語対応するには、各言語を話せる人員を確保するのも一つですが、コストが高くなってしまいます。
多言語化できるツールがあるのでいくつか比較して、自社のニーズにあったものを選びましょう。
国によって決済、配送の方法が異なります。
また、手数料や配送料が高くなってしまっては、収益にも繋がりにくくなってしまいます。
商品によって配送手段も異なるので、自社のニーズにあった業者を探しましょう。
海外への発送は国内向けの発送よりも配送日数が長くかかり、費用も高額になるケースが一般的です。
発送先の国によってもかかる費用や日数は異なります。リードタイムをあらかじめ把握し、ユーザーに対して適切な配送料金と到着予定日数を伝えるように心がけましょう。
また、海外に商品を発送する際は通関検査が必要となり、商品の種類や金額によっては関税が発生するケースもあります。
関税は基本的に受取人が支払うことになるため、関税がかかる可能性について事前に伝えておきましょう。
国内向けの発送であっても物流トラブルが起こる可能性はありますが、海外向けの発送は配送期間が長くなるため、さらにリスクが高まります。
梱包を厳重にするなど配送事故が起こりにくい発送を心がけると同時に、荷物の流れを常に把握できる状態にしておき、トラブルの原因を速やかに突き止めて適切な対処を講じられる物流体制を構築しましょう。
SNSを利用することもプロモーションには有効です。
世界中の消費者が集まるSNSで自社の商品を上手にアピールすることができれば、認知度が向上し、売上アップにつながるでしょう。
ターゲティングをしっかり行えば、コストを低く抑えながら高い宣伝効果が期待できる広告メディアとなります。
膨大な世界市場に自社の商品を売り込むためには、国内展開以上に詳細な戦略設計と分析が必要になります。
自社の商品を、海外のどのエリアの、どんな層に売りたいのか、国民性や習慣など幅広い視点からターゲットを選定し、準備にしっかりと時間をかけることが重要です。
海外ユーザーの手元に商品が届くまでには長い配送期間を必要とします。少しでもスムーズに商品を届けるためには注文後のスピーディーな出荷が重要であり、物流体制をいかに整えられるかがカギとなります。
海外への発送にはインボイスや通関書類の準備も必要になるため、国内向けの発送業務とは勝手が違うと感じる部分も多々あるでしょう。海外の物流業者は日本と比べて荷物の扱いに難がある場合も少なくないため、配送途中で商品が破損しないような梱包も必須です。
社内で海外発送に対応するのが難しいと感じたときは、物流アウトソーシングなどを活用してプロに発送業務を委託することも検討しましょう。
激化する国内EC市場と比べ、伸長続ける世界のEC市場は魅力的です。
特に「日本ブランド」は、世界中どこでも通用する信頼の証と言えるでしょう。
価格だけではない付加価値を売っていくことが越境ECで成功するためのカギとなります。インターネットの世界的普及とITサービス進化により、国と国の距離は縮まり、国を跨いだビジネスも容易になりました。
ただし、越えるべきハードルが多いことも事実です。
自社だけでは対応が難しいと感じる部分は、アウトソーシングを専門にしている物流業者など、知見あるパートナーを活用してみてはいかがでしょうか。
物流をプロフェッショナルに託すことで、商品を提供する側は「どの国で、誰に自社商品を訴求するか」という一点に注力できるようになります。そして、レッドオーシャンと化す国内市場から飛び出し、海外のブルーオーシャンを目指す動きを加速させることができるでしょう。
エスプールロジスティクスでは、越境EC展開の支援サービスとして、
「越境進出ワンパッケージサービス」「現地進出プラン」の2つをご用意しております。