過剰在庫とは、本来の需要よりも多く商品を入荷してしまったために売れ残り、倉庫に保管したままになってしまった商品のことです。
過剰在庫となった商品は倉庫を圧迫し、保管費用や維持費を発生させながら、次第に劣化していきます。
商品は時間が経過すればするほど売れなくなり、最終的に廃棄処分を行わなければならないため、利益を得るどころか処分のためのコストまでかかってしまいます。
過剰在庫が発生する原因はさまざまですが、企業にリスクをもたらす存在であることは間違いありません。
適切な対策をとることによって、少しでも過剰在庫を生じさせないような体制を構築することが重要となります。
では、過剰在庫はなぜ発生してしまうのでしょうか。
原因には次のようなものが考えられます。
「このぐらいは売れるだろう」という曖昧な予測を立てて発注を行うことが、過剰在庫の原因として最も多いパターンです。
正確な発注をするためには、商品ごとの需要量をデータに基づいて慎重に分析する必要があります。
過去のデータを十分に活用して欠品を防ぎつつ、過剰在庫にならないような発注を心がける必要があります。
商品の価値や魅力が低下したために需要が落ち、これまでと同じ販売量を保てなくなるケースもあります。
市場の動きをよく見極めながら発注量を調整し、在庫が増えないようにすることが大切です。
商品価値が低下してしまう要因には、ニーズの変化や市場への過剰供給などさまざまな理由が考えられますが、なぜ商品の魅力が低下したのかをしっかりと分析し、改善策を考える必要があります。
また、在庫状況のみならず、出荷先の販売状況を知ることも重要です。
商品価値の低下により出荷先の小売店などに在庫が大量に残っているのに新たな生産や仕入れを行ってしまうと、いつまでもその商品が在庫として倉庫に残り続けてしまうことになります。
いったん発送した商品が何らかの理由で顧客から返品されてしまい返品在庫が増加することによっても過剰在庫は発生します。
返品在庫は、本来であれば既に在庫が引き落とされている商品です。そのため、不足した在庫を補充するために追加発注をかけてしまっており、新たに追加された在庫に返品在庫が加わることでさらにスペースを圧迫します。
お客様都合の返品のケースもあるため完全に返品をなくすことは難しいものの、誤出荷や初期不良などによる返品は検品の徹底である程度は防止できます。
自社の在庫を適切に管理できていないため、追加発注する必要がない商品まで余計に発注してしまい、結果的に過剰在庫を招くこともあります。
普段から定期的に棚卸しを行い、正しく在庫管理を行うことで、本当に発注しなければならない商品はどれなのかをしっかりと把握しておくことが大切です。
過剰在庫を抱えることには想像以上のリスクやデメリットが存在します。
ここでは、具体的にどんなリスクやデメリットがあるのかを見ていきます。
過剰在庫を抱えると古いものから商品の劣化が進んで販売できなくなったり、あるいは商品そのものが時代遅れとなって不良在庫化したりする場合があります。
売れなくなる前に値下げして販売するなどの対策方法も考えられますが、それでは本来得られるはずだった利益は確保できなくなってしまいます。
さらに、値下げしても商品が売れずに廃棄を行うことになれば廃棄費用がかかるため、損益は大幅なマイナスとなります。
不良在庫を増やすことは、自ら利益を減少させることともいえます。
在庫が増えれば増えるほど保管費用もかさみます。
スペースが足りなくなって新しく外部の倉庫を契約したりすれば、倉庫代はもちろん、入出庫のために要した運搬費や人件費などもかかり、大きな損失となってしまいます。
仕入れを行うということは買掛金が発生するということであり、当然ながら支払い義務が生じます。
しかしながら、在庫となった商品はいつまでも売れなければ、売掛金を生むことにつながらず、支出だけが発生した状態で資金の流れが止まってしまいます。
これを複数の商品で繰り返してしまうと、キャッシュフローが大幅に悪化し、運転資金が不足して、会社の経営そのものに影響を及ぼすおそれがあります。
過剰在庫になりやすい商品には一定の傾向があります。
ここでは、どのような商品が過剰在庫となりやすいのかを紹介します。
特定のサイズだけがなかなか売れず、過剰在庫になってしまうケースは少なくありません。
すべてのサイズで同じ個数を発注してしまったために過剰在庫が発生してしまうというパターンです。多色展開をしている商品にも同様の傾向が見られます。
サイズ展開している中で一番小さなものと一番大きなものは平均的なサイズのものよりも発注を減らすなどの工夫が必要です。
サイズ展開同様、カラー展開が多いことも過剰在庫を引き起こしやすい原因となります。複数のカラーを扱っていると、売れやすいカラーとあまり売れないカラーが発生しやすいため、すべてのカラーで同じ個数を発注すると過剰在庫が発生します。
売れやすいカラーを多めに発注し、あまり売れないカラーの発注は少なめにするなど、工夫をしながら適正在庫を維持しましょう。
季節のトレンドに合わせて発注する商品は、その時期を過ぎると極端に売れなくなってしまいます。
これらの商品を過剰に発注しすぎて不良在庫化すると、たとえ値下げしたとしても売り切れず、また流行もあるため、次の年まで長期間保管したからといって再び売れるようになるとも限りません。
経年劣化も発生しますので、結果として廃棄処分を行わなければならない確率が非常に高くなってしまいます。
競合の多い商品は、市場では売れ筋であっても過剰在庫になりやすい商品の一つです。数ある競合の中から自社を選んでもらわなければならないため、選ばれなかった時に思いのほか在庫が残ってしまい、倉庫で保管スペースを圧迫する存在となります。
「人気の商品だからすぐに売れるだろう」と安易に判断せず、競合の商品の販売状況なども加味して、発注する量を決めるようにしましょう。
どれほど注意していても、過剰在庫のリスクは常につきまといます。もし過剰在庫が発生してしまったら、取れる対策は基本的に「販売する」「廃棄する」のどちらかです。
販売する場合は、季節のセールやアウトレットなどで値下げ販売することで在庫を削減するなどの対策が考えられます。利益は削られますが、売上を確保しながら問題を解決できる方法です。
それでも処分しきれなかった在庫は、多少コストはかかりますが思い切って廃棄して、保管スペースを確保する方法しか選択肢はなくなります。
過剰在庫を減らすためには、在庫を適正に保つための工夫が必要になります。
具体的には次のような例が挙げられるでしょう。
自社の在庫がどのくらい残っているのかを把握できていなければ、商品をいくつ発注する必要があるのかもわかりません。
倉庫にどの商品がどれだけあるのか、商品別の在庫を正確に管理し、在庫が過剰となっている商品を明確にすることが重要です。
発注数を決めるときは感覚に頼るのではなく、販売データなどに基づいた正確な需要予測を行うことで、過剰な発注を防止する対策をとりましょう。
適正な発注量が見極められれば、過剰在庫を抱えるリスクを大きく下げることができます。
どのくらい商品を生産しているのかを押さえていなければ、現在の生産数が適正かどうかを判断することも難しくなってしまいます。製造と販売のズレをなくすためにも、生産ラインを可視化し自社の生産状況を把握することは欠かせません。
過剰在庫を可視化して正確な需要予測を行うために、在庫管理システムを導入することをおすすめします。
在庫管理システムを利用すれば、商品別の在庫が今どのくらいあるのかを容易に把握することができ、定期的な棚卸しもシステム上で行うことができます。
また、過去の販売データなどから自動的に需要を予測し、どの商品をどれだけ発注すべきかを算出してくれるため、発注担当者の大きな助けとなります。
ハンディスキャナなどによる在庫の登録ができるシステムもあるため、在庫を記録する際に人為的なミスを減らす効果もあります。
在庫の保管コストの増大やキャッシュフローの悪化につながることが多い「過剰在庫」。
多くの場合、誤った需要予測や不徹底な在庫管理などによって引き起こされます。
企業の経営悪化を招きかねないこの過剰在庫を減らすためにも、在庫管理システムを導入し、在庫状況を可視化することで正確な需要予測を実現しましょう。