在庫回転率とは?計算⽅法や向上のためのポイントを解説

自社の在庫がどのように動いているのか、あなたの会社ではしっかりと把握できているでしょうか。
在庫が把握できていないと、不要な在庫を抱えたり顧客のニーズを見誤ったりする可能性が高まります。
とはいえ、どのように在庫の動向を把握すれば良いのかわからないという企業も少なくないのではないかと思います。

適切な在庫管理には、在庫回転率を活用する方法が有効です。
そこで今回は、在庫回転率の計算方法や、回転率を向上させるためのポイントについて紹介します。

在庫回転率とは?

在庫回転率とは、一定期間内に在庫がいくつ出入りしているかを示す指標のことです。
数値が高いほど倉庫に商品が出入りするサイクルは速く、低いほど在庫が長く倉庫にとどまっていることを示します。
自社の在庫推移を時期別に把握できるため、経営上さまざまな場面で役立ちます。

とはいえ、商品の種類や性質によって平均的な在庫回転率は変動するので、数値が低い商品が必ずしも売上の停滞を招く要因になるわけではありません。
計算方法や活用法をしっかりと理解した上で倉庫運営や経営方針の策定に役立てることが大切です。

在庫回転率の計算方法

複雑な指標と思われがちな在庫回転率ですが、計算自体はとてもシンプルです。
ここでは、金額での計算方法と個数での計算方法をそれぞれご紹介します。

金額での計算方法

在庫回転率を金額で計算する際は、「商品の売上金額(1年間)÷平均在庫金額」の計算式を使用します。

商品の売上金額とは、1年の売上総額のことです。「出庫金額」もしくは「売上原価」という表現が用いられるケースもあり、「年度初めの商品棚卸額+年間の商品仕入額-年度末の商品棚卸額」で算出します。実際の販売額で計算すると正しい数値を算出できないため、原価を用いるように注意しましょう。

個数での計算方法

在庫回転率を個数で計算する場合は、「出庫した総数÷平均在庫数」の計算式を使用します。

たとえば、1年間に倉庫から出庫した個数が1,000個で、期の初めの在庫の個数が80個、期末の在庫が20個なら、平均在庫数は50個となり、在庫回転率は「20」と算出されます。

一般的には金額での計算方法を使用して在庫回転率を求めるケースが多いといえますが、数量を用いたほうが具体的なイメージが湧きやすいので、あえてこちらの計算式を使うケースもしばしばあります。

期首と期末の平均値で計算するのがポイント

金額での計算方法に使用する「平均在庫金額」と、個数での計算に使用する「平均在庫数」は、ともに期首と期末の平均値で計算するのがポイントです。

平均在庫金額は「期首の在庫金額+期末の在庫金額)×1/2」の式を使用して算出します。この金額は、「平均商品在庫高」「棚卸資産」などと表現される場合もあります。

平均在庫数は「期首の在庫数+期末の在庫数)×1/2」の式を使用して算出します。この計算式を応用すれば、目標とする在庫回転率に到達するにはどのくらいの平均在庫金額が必要になるのかも算出できます。

在庫回転期間の計算⽅法

どのくらいの期間で在庫が1回転するのかを表す在庫回転期間は、次の計算式を使用して求めます。

棚卸資産÷売上金額

これを12で割れば1ヵ月単位の、365で割ると1日単位の在庫回転期間が計算できます。
たとえば、年間売上金額が3,000万円で棚卸資産が100万円の場合、在庫回転期間は100÷(3,000÷365)≒12.18日となり、約12日で在庫が1回転することを表します。

在庫回転率と適正在庫の関係とは?

在庫数が適正かどうかを判断するには、在庫回転率と在庫回転期間の両方の指標を活用する必要があります。

在庫回転率は、1年間に何回在庫が入れ替わったのかを表す数値です。たとえば平均在庫金額が2,000万円で1年間の売上金額が8,000万円の場合、在庫は年に4回入れ替わっていることになります。また、このときの在庫回転期間は3ヶ月となります。

在庫回転率の数値が大きく在庫回転期間の数値が小さい(1年間に在庫が入れ替わる回数が多く、在庫が1回転するまでにかかる時間が短い)ほど、適正在庫を維持できていると判断できます。

在庫回転率を把握するメリット

在庫回転率を把握するメリット

では、在庫回転率を把握するとどのようなメリットを得ることができるのでしょうか。
その3つのポイントを紹介します。

在庫の動きが可視化できる

在庫回転率を把握することで、在庫の動きが可視化できるようになります。
日常的に在庫の動きをよく観察することも重要ですが、それだけでは全体の状況を見通す上で不十分な面もあります。
在庫の販売ペースや販売される商品の数量などを具体的に把握するためにも、在庫回転率から導き出される在庫の動向を注視するようにしましょう。

顧客のニーズが把握できる

在庫回転率の高い商品は、「顧客が購入する頻度の高い商品」と言い換えることもできます。
商品ごとの在庫回転率がわかれば、顧客がどの商品を求めているのかが可視化され、ニーズの把握につながります。

たとえば在庫回転率が極端に低い商品は、在庫が倉庫内にいつまでも留まって保管コストを増加させたり保管スペースを圧迫させたりする原因になっている可能性があります。このような商品は思い切って廃棄し、在庫回転率が高い売れ筋の商品を保管するためのスペースに割り当てるというアプローチが可能です。

ニーズが把握できていれば、売れる商品は在庫を増やし、売れ行きがそれほどよくない商品は在庫を減らすといった対応が取れるようになり、不良在庫が少なく利益効率の高い企業体質を作ることも可能となります。

過剰在庫など無駄なコストが削減できる

定期的に在庫回転率のデータを取得することで、現在のデータと過去のデータを比較し現状の在庫が適正かどうかを把握することができます。
在庫回転率の低い商品は、簡単に言えば売上の悪い商品です。
在庫回転率が悪化しているにも関わらず同じ量の入荷を繰り返していると、販売が追い付かず過剰在庫に陥ります。
売れない商品を倉庫に長期間保管しておくと、保管コストがかかるだけでなく、最終的には不良在庫化して廃棄コストが発生するリスクも高まります。
しかし、売れ行きが落ちてきていることに早い段階で気が付けていれば、将来発生する無駄なコストを削減できます。

在庫回転率を上げるためのポイント

在庫回転率の向上は、売上の向上や顧客満足度の向上とも密接に関わっています。
次の3つのポイントに注意すると、在庫回転率をより高めやすくなります。

⽬標の在庫回転率を設定する

どのくらいの在庫回転率を目標にするのかを明確にしましょう。
具体的な目標がないと、従業員のモチベーションも上がりにくくなってしまいます。
目標値を設定する際は、次の数式から算出してみましょう。

年間の目標売上金額÷目標平均在庫金額

たとえば、年間の売り上げ目標が1,000万円で、目標の在庫平均金額が100万円なら、目標の在庫回転率は「10」を設定すると良い、ということになります。
また目標値を設定する際は、同じカテゴリーの商品を扱う同業他社の在庫回転率もあらかじめリサーチすることをおすすめします。

リードタイムを短くする

注文完了から商品が顧客の手元に届くまでの時間をリードタイムと呼びます。リードタイムが短いほど顧客満足度は高まる傾向にあると言われており、それがリピーターの獲得にもつながるため、商品の売り上げが増加して在庫回転率も向上します。
商品をスムーズに顧客のもとに届けられるよう、受注から配送までの流れを見直してみましょう。

在庫状況の⾒直し

長期間にわたって倉庫に在庫が残り続けると、新たな商品を入荷する機会が減少して在庫回転率が悪化します。
在庫はなるべく適切な個数にとどめて、必要以上に持たないことをおすすめします。
管理が不十分なために存在が見落とされ、商品が長く倉庫に放置されているケースも少なくないので、管理体制を含めた在庫状況を総合的に見直すようにしましょう。

まとめ

ここでは、在庫回転率の計算方法や回転率を向上させるためのポイントについて紹介してきました。

在庫回転率は、在庫を可視化して最適な在庫数や顧客ニーズをつかむ上でとても重要な指標となります。
リードタイムの短縮や在庫状況の見直しなど、在庫回転率の向上に必要な施策は企業の状況によってさまざまです。
まずは自社の在庫回転率を計算し、具体的な改善目標を立てるところから始めてみることをおすすめします。